市町村が森林環境譲与税を活用する、これは森林経営管理制度を実践することです。ただ、この制度を進めるためにやらなければならいないことは多岐にわたります。そのなかでも基本となるものの一つは、森林境界を定めることです。なぜなら、山主さん自身が所有する山林の将来を考えるために、自分の山林は「どこ?」「どの範囲?」がわからなければ話は進みません。
そんなことは山主さんなら知っているでしょ?と思うかもしれませんが、地域によってはそうでもない山主さんもいらっしゃるそうで、山主さん毎の境界が不明確で森林を活用するための準備に多大な時間がかかりそうな森林もでてきています。
森林の境界を定めれば良いだけのこと?
それでは、森林境界調査を!となるわけですが、こういった地域では一筋縄ではいきません。
当方は境界確定は大変?となんとなく理解していましたが、森林はもっと大変という話を聞いてもイマイチ分かってなかったので、森林境界調査勉強会に参加してみました。そして感じたことを投稿します。
参加した勉強会
とよかわ森のデザイン講座「第一回 森林境界調査勉強会」
※豊川水源基金令和3年度森林づくり事業助成金を活用
主催)奥三河ビジョンフォーラム
日時)令和3年11月28日 9:00~15:00
概要)設楽町内の森林の境界調査をする流れを体験
森林境界調査の実態
一般的な境界確定は”たいへん”
土地には利権があるので、その境界を定めることは、”たいへん”と聞いたことはありました。土地の境界を定めるための資料(法務局備え付けの地図(公図)、土地の登記簿など)を集め、資料から分かる境界について、接する双方の方の確認を取っていく作業だからです。
森林の境界調査は”もっとたいへん”
上記のように境界確定は”たいへん”ですが、ただ、境界が不明確な森林では、”たいへん”はこれ以外にもありました。それは、そもそも定めるべき境界はどのように作るからはじまるからです。
なぜ森林の境界を作るのか?
一般に境界を定める資料として有力なものに公図があります。
土地を特定し、土地の位置、形状、地番等を明らかにする資料として利用されます。ただし、地籍調査が行われていないと、「地図に準ずる図面」として、 距離・面積・方位・角度等はそれほど信用できる不動産登記法14条地図が備え付けられるまでの間の図面となります。
この地域の森林では地籍調査が行われていないことが多く、そうすると地図に準ずる図面(公図)を集めても森林の境界はあってないようなものと言えます。実際、勉強会で公図を張り合わせても、距離・面積・方位・角度等は信用できないので、実際の形にはなりませんでした(というより全く違う形になって正直びっくりしました)。つまり、集めた公図では森林の境界を復元できないのです。公図を繋ぎ合わせると、森林所有者の配列がわかる!までとイメージすればよいかと思います。
境界は公図を参考にして現地を見るしかない!
尾根や谷や水路や道を見つけ出すために背景地図で使います。
決めなければならない境界の候補とする線を作成するために使います。
現地の森林状況を知る資料としています。④とセットで見ると効果的です。
現地の森林状況をを知る資料としています。基本的に所有者のみ取得できます。樹種が分かるので③とセットで見ると効果的です。
そして、これらを使って以下のように境界を決めていきます。
➡②を画像ファイルにして、GISに取り込んで①にできるだけ合わせて張りつけます。①からわかる尾根とか谷とか水路とかに、できるだけ合わせて張り付ける感じです。イメージはその辺りに張り付けるだけです。
➡②の境界をなぞってラインにします。
➡①からわかる境界が尾根とか谷とか水路になっているものに合わせて②を修正していきます。
➡③と④も併せて見ます。これは杉やヒノキは植林されたものであり樹種が境界を表している可能性があるからです。
➡ハンディGPSに手順2の境界候補ラインを取り込む。
事前準備完了!
➡ハンディGPSを片手に、境界が分かる目印(境界杭、境界木、石が積んである、林齢の違い、木の種類の違い)を見つけながら境界の頂点の緯度経度を記録していく。このとき準備した紙地図にメモを書き込み、見つけた目印を写真として取って、その状況等を後程わかるようにしています。電柱等の公共物の用地は登記されていて基準にできるので補正の材料にもなります
森林を彷徨い歩いている感じです。。。
➡記録した緯度経度によって境界候補ラインをGISで修正する。
勉強会を通して、びっくりしたこと(職人技?)
①の等高線から尾根や谷を推測、③④から境界有無の推測するところ
地図からわかる地形の関係を一瞬で判断する”職人技”でした。
★そして最も驚いたのは・・・
現地で確認する境界を決める目印の見つけ方です。実際には、有ってほしい境界杭はほとんどありません。それでは、どうやって境界を決めるのか・・・となりますが、これは本当に凄いです。
・境界木の種類や太さ、樹皮の色等々、木の生育を知っているからこそわかる目印を見つける
・目印を仮に境界の頂点としたら・・・想像して境界候補ラインを頭の中で歪めます
・頭のながで補正した境界候補ラインによって目印を探しまくる
数回程度の境界調査をしても絶対にできないであろう”職人技”でした。
まとめ
勉強会を通して、森林境界調査の体験をすることができました。森林の境界を決めるうえで、森林探索の資料やその状況を知ることができましたが、資料からつくる境界には品質に問題がありました。この品質は山主さんも困ってしまうであろう候補としてのラインでしかないです。そして、このラインの確定には、森林のことを良く知らないとできない職人技の作業が必要です。
端的に言えば。。。森林の境界確定の大変さは、立ち合いを得るといった表面的なものではなく、境界は仮想的な不明確なものだから境界を決められないことでした。
森林経営管理制度の円滑な実践には森林境界確定という大きなハードルがありました。ただ、これをクリアしていかないと森林経営管理制度の実践は足踏み状態となる地域もあることが懸念されます。
今後できること
現在もGISは必携のツールであるので、地理院地図から地形を割り出すこと、現地で行われている境界候補ラインの合理的な修正を可能とすることを考えてみたいと思います。そうすれば職人でなくても見習いでも森林境界策定作業をできるのでは?と思っています。
すごく分かりやすくまとめられていて、感動しました!
「職人でなくても見習いでも森林境界策定作業をできる」ぜひ、そうなると良いですね。
コメントありがとうございます!私有林であるとやらなければ「森林経営管理制度」を進められないものだと思ってます。
GISやハンディGPSを使うので「効率的な簡単な作業となれば」「誰でも取り組めるとなれば」大変な作業が少しづつ簡単になって、結果的に量ができるに繋がれば嬉しいです。