GIS 本当に必要な機能の絞り方

GISを諦められない方に朗報!備えは不要!必要なときに対応できればいい」

便利なGIS!と漠然としたままでは、GIS開発のコストが「GIS>業務システム」となることも。。「GISにそこまでかけなくてよかった」と評価を受けたくないですね。

今回は、多機能なGIS機能から、使いそうにない機能を選び、どうやって省くか?をお伝えしていきます。

written by 澤田 

GISが役立つ業務を知ることができるGIS対応業務一覧表を配布中です

澤田
澤田

GISを開発する際にはGISとして必要な機能をアプリケーションで使用するためにGISライブラリーを使用します。このGISライブラリーを一般的にGISエンジンと呼びます。

GISでは地図でモノを見ることができます。地図上のモノの表現や地図上のモノの編集ができます。さらにモノの持つ属性を俯瞰すると意思決定が直感的になります。

ただ、こういった漠然とした期待だけではGISエンジン※の“絞り込み”はできません。“絞り込み”ができていないとGISエンジンに使わない多くの機能を求めたり、新機能開発を必要としたりと、開発コストが膨らむことがあります。そもそも、GISが支える業務システムにおいてコストが「GIS>業務システム」では本末転倒です。そして「GISにそこまでかけられない」として導入しない、導入しても”金食い虫”といった評価を受けかねません。

この記事はこんな方にオススメです
  • GISの導入にあたって、スコープを明確にしたい
  • 要件の優先順位をつけたい
  • 過不足のない要件定義をしたい

1.業務洗い出し→スモールスタートがオススメ

業務で求められるGIS要件は、スマホの道案内アプリと比べ広範囲にわたります。そのため「どんな機能があって、それらがどこかの部署でいつ必要になるか?」といったことを、あらかじめ計画しておくことは難しいでしょう。そこで、このような網羅的なチェックリストを活用して、まずは用途から整理しておくことをオススメします。

全体が把握できたら、以下のステップで要件を絞り込んでみてください。
step1 「誰が」「いつ」「どのように」使うのかを整理する
step2 この機能は年に何回使うのか?を整理する
step3 それぞれの機能ごとに予算を整理する

例えば・・・
<作業員の動態把握>
step1
「作業進捗管理者」「夕方(業務終了1時間前)」「作業漏れ・作業遅れのチェック」
step2 
「毎日」
step3
・「作業員が逐次報告するため機能」⇒スマホアプリ開発、報告位置を表示する機能、作業員の報告記録機能など
・「報告を地図に分かりやすく表示する機能」⇒位置情報の表現方法(色塗や点情報の表示の仕方)など
<フランチャイズ店の出店検討>

step1
「フランチャイズ本部」「新規出店を検討するとき」「地域状況に見合う売上見込検討」
step2
「年に数回」
step3 
・「新規出店地の選定」⇒エリア作成機能、統計データ集計、集計結果をExcel出力など
・「地域に合う開業支援をする機能」⇒競合店データ取込機能、優良店や競合店との比較機能など

このように考えていくと、要件に優先順位をつけやすいです。

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また、GIS導入にあたっては、検討されて見送られることが多い機能がいくつかあります。代表的なものを次の章で3つご紹介します。

2.よく検討に挙がる機能と判断基準

2-1 3D表示

業務上でVRやプレゼン以外では3D表示はまず要りません。逆に建物に隠れてないか?と思うと方向を変えなければならないので余計な手間になることさえあります。また、3D表示ができるGISでは、機能も高度化して高コスト化している可能性が高いです。求めるPCスペックも高くなりますので高額になります。

業務を進めるにあたって、かっこいい3D表示は必要ですか?

2-2 多様なデータフォーマットへの対応

GISで使えるデータはたくさんあります。そうするとデータは全部使ったほうが良いと思いがち。でも、実現したいことに対して、使わないデータは取込まない方がシンプルなGISとなって使いやすいです。GISで使えるデータの代表的なものに住宅地図があります。でも、河川管理のGISであれば個人宅の表札は表示されなくても大丈夫ですね。

データには市販されているものやオープンデータ等、たくさんのものがあります。そして、データの形式も様々です。それらをすべて取り込めるGISは、便利そうですけど木野は増えるので高コスト化しているかもしれませんよ。また、GISで使っている地図データを外部に提供する機能はGISのリプレース以外はほぼないでしょう。

データフォーマットへの対応だけではありませんが、”システムの可能性”や”システムの融通性”に備えること、こういった機能はGISエンジンが対応できることを確認しておいて先送りしてしまえばよいでしょう。

2-3 正確すぎる位置情報

道路や水道管管理といったインフラを管理するGISではミリメートルレベルで正確でないといけません。でも販売戦略における営業エリアは・・・?地域の実情把握するための統計データは・・・?顧客の住所は・・・?最短距離は・・・?業務によっては粗い精度でも問題ないものも数多くあります。
どこまでも正確にデータを作りたいのは、もっともなのですが、精度にこだわりすぎると使えるデータが無く、データづくりに時間を要してしまったり、コストがかかることもあります。PCスペックへも影響を及ぼしかねません。精度をどこまで必要かをGIS開発に着手する前に考えておきましょう。”大雑把な”精度でいいデータなら結構代用が利くことが多いのが実際です。

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3 必要な機能に絞り込んだら、どれくらい予算が変わる?

GISでは、空間的な関係性を見出すといった地理的な高度な分析ができます。例えば、駅の周辺は駐車料金が高い、小売店が最寄り駅から遠いと駐車場の広くなる等の定量的評価ができます。ただし、業務においてGISが支援しようとする行動は直感的でとてもシンプルに解決している場合が多いです。そうすると業務に求められるGISに高度な分析は必ずしもなくてもいいかもしれません。
GISが分析寄りであればあるほど、より多くの機能を持ったGISとなりがち。そういったGISはなんでもできそうなので、”かっこいい”ですが、標準的なバージョンであっても、業務では使わない機能を含んでしまって、高コスト化しているかもしれません。

また、導入するPC台数は抑えられれえばコスト削減に繋がります。GISエンジンや地図データは使用許諾のライセンスが必要になります。ライセンスは有償であるものが多いです。「機密情報を扱って経営戦略するGIS」「営業行動履歴を評価するGIS」であるなら将来にわたって、すべての従業員が共有することはありませんね。GISの使用目的を明確化して、本当な必要なライセンス数のみで限定しましょう!

GISでこんな分析・表現は必要ですか?

プロフェッショナル版のみで提供される地図表現!(抜粋)

地図上のモノ(左図ではメッシュ状のモノ)が二つの属性を持つとき、二つの値を使って段階的に色を変化させることができます。一人暮らしの学生の人口分布など、二つの数値情報をもとに段階的に表示させることができます。

ハフモデルは「消費者が、どの店舗で買い物をするかの確率を求める」ものです(詳細は割愛)。このモデルを使うと店舗の客を引き寄せる力を地図上で表現できます。ある地域の顧客はライバル店舗にどれだけ行ってしまいやすいのか?新店舗を構えた時にどれだけ顧客を呼ぶことができるのか?など、新店舗を構えるときの手助けをする情報の可視化できます。

ヒートマップとは限られたサンプルデータの中で、データの密度とそれぞれのデータが持つ属性の数値から全体分布を推定する手法の1つです(詳細は割愛)。店舗分布などを定量的に分析する場合に利用します。

顧客を地図に表示し、既存顧客は黄色、見込み顧客は赤色といった表示するだけならスタンダード版で十分にできます。つまり、上の三つを使わないGIS開発であれば、スタンダード版でいいわけです。

<開発環境>スタンダード版(税抜)プロフェッショナル版(税抜)
開発ライセンス30万円100万円

※開発ライセンスは開発部署ごとに必要です
※開発ライセンスはSDKとして提供されます

GISを使うPCが1台増えればコストは嵩んでいきます

<運用環境>スタンダード版(税抜)プロフェッショナル版(税抜)
運用ライセンス10万円10万円

※運用ライセンスは開発したGISを利用するPCごとに必要です
※Standard版/Professinal版は同額です

上記について詳細はこちら(マップクエストホームページ)をご覧ください


ちなみに、かつて地方自治体では「統合型(様々な業務を横断的に関わるGIS)」が多かったですが、最近では「個別型(上下水道管理、固定資産管理など業務特化のGIS)」へ変わってきています。このように、最近は業務横断的なGISとして全職員にライセンスするのではなく、目的に特化して専門化したGISとして担当課職員のみに限定してライセンスを用意することが多くなっています。


今回は、何のために使うGISか?を考えておくと、必要以上にGISに求めない、そうすると費用抑制の可能性がでてくる!をまとめてみました。ひとえにGISといっても、その用途は様々です。用途にあわせて、機能もたくさんの種類があり、導入にあたって迷ってしまうことも多いかもしれません。また、機能要件を盛り込みすぎてコストが膨らんでしまう、ということもあるでしょう。要件定義において、必要な機能に絞り込んでいく手順をお伝えしました。

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