森林を知って、森林活用して、森林を育成する

日本の森林は大丈夫?

いきなりですが、「日本の森林って大丈夫」と聞かれるとどう思われるでしょうか?

きっと、日本の国土の67%、3分の2は森林、 木材価格の下落や木材需要減少、担い手の高齢化などで林業は厳しい状況とかイメージされることと思います。

地球温暖化防止、国土保全や水源の涵養等適切な森林の整備は重要なものです。そして林業の状況を改善するための政策は行われています。市町村主導の森林環境譲与税を活用して森林整備等が進んでいます。

キーワードは「森林環境税・森林環境譲与税」「 森林経営管理制度 」です。市町村は「 森林環境譲与税 」を財源に「森林経営管理制度」に計画的に取り組んでいます。

市町村の森林を見る!

当たり前ですが、活用される森林は市町村にあるので、まずは統計や各種報告から森林を見てみます。実際に平成29年3月末の「市町村別私有林人工林面積」を林野庁のホームページから取得しました。「市町村別私有林人工林面積 」は、目的通りの 森林経営管理制度に取り組む市町村別に整理されていて、まずまず良いデータです。

なお、私有林とは、専ら個人や会社等が管理する森林をいい、公的機関(地方公共団体、独立行政法人、国立大学法人、特殊法人、森林整備法人等)が所管(管理)する森林は含まないとなっています。

ただ、市町村別なので1700件以上のデータですので、日本の森林はどうなっている?どこのあたりに分布している?を見ようとすると。。。ちょっと大変すぎます。

「市町村別私有林人工林面積」 を一気に見る!

というわけで森林の状況を知る(俯瞰する)ために今回も地図を使って一気に見てみます。

具体的には白地図を市町村の形で用意して、「市町村別私有林人工林面積」 を市町村の形に紐づけて地図に表現してみました(ちなみに色塗りは面積を100ヘクタール刻みでだんだん濃くしています)。

市町村別私有林人工林面積を地図で表現

なんかイメージと違いませんか?

頑張ってみました。

生のデータをそのまま俯瞰してみて新たな気づきが出てくるといいのですが。。。気づく前に”あれ?”しか出てきませんね。

  • 国土の3分の2が森林ならもっと色塗されるのでは?
  • 森林の多いところをパッと見ると岐阜(高山市)は納得できるけど、静岡(浜松市や静岡市)なの?長野とかでは?

表現の仕方にひと工夫が必要です

イメージと違ういろいろな理由はありそうですが、大きな原因の一つは市町村の面積に依存していると思います。

別の資料によれば市町村の面積の大きさは、1位:高山市、2位:浜松市、3位:日光市。。。です。もう気づくと思いますが、市町村の面積が大きければ概ね森林は多い可能性が高いです。

「市町村別私有林人工林面積」 を見方を変えて一気に見る!

市町村の面積に依存するなら、面積で割ってしまえばよいので、単純に「市町村別私有林人工林面積÷市町村別面積」です。要はその割合を見ます(本当は、分母はさまざまな条件で減算すべきでしょうが、ざっくり見るということでご理解ください)。それでは、地図を使って深堀りです(ちなみに今回は割合をを20%刻みでだんだん濃くしています)。

市町村別私有林人工林面積/市町村別面積を地図で表現

まずはイメージに近づいたのではないでしょうか?紀伊の国は「木の国」ということも納得ですね。九州はや四国は多いことにも気付きます。でも長野・東北・北海道は、まだ「ん?」ですので、もっと違った要因があるのかも?です。日本全体だけでなく、もっと小さな範囲で地域性を考慮して見るべきかもしれませんね。

出典 ほか

上記、2地図は以下を株式会社マップクエストが取得し加工したものです。
<統計データ> 市町村別私有林人工林面積(平成29年3月31日現在)Excel版 /林野庁(2021年10月14日取得)
<地図データ>国土数値情報(行政区域データ)/国土交通省(2021年10月8日取得)

<データの取得>

●林野庁ホームページより

https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/genkyou/h29/7.html

●国土数値情報ダウンロードより

https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/gml/datalist/KsjTmplt-N03-v3_0.html

まとめ

地図を見ると、多くの地方自治体には私有林人工林がたくさんあることが分かりました。そして地域性もありそうと思います。

そして、森林を守るという目線からは、市町村の森林整備等に期待しますが、自治体ごとにその面積割合から差があるので方法は同じではないほうがよさそうです。実際、森林資源が異なれば、森林経営管理、ざっくり言えば 森林の整備 や活用のための施策も違うことが当たり前ですし、森林を活用する意味合いも変わってきます。

おまけ:地方自治体の森林経営管理制度による施策を成功させるには・・・

森林環境税及び森林環境譲与税は、市町村及び都道府県が実施する森林の整備及びその促進に関する施策の財源に充てるために創設されました。目的は「森林の有する公益的機能の維持増進」です。つまり、市町村は何らかの方法で森林を活用して、林業を持続的に発展させ森林の多面的機能を発揮させなければなりません。

そもそもですが、森林の位置づけは市町村の将来のあるべき姿を示した総合計画や市町村森林整備計画で定められています。ただ、これらを実現する事業を行う財源不足や制度を使いこなせなく、なかなか林業施策の難しかったのでは?と感じます(自身の自治体財政係の経験からそう思います)。これに対し、財源は森林環境譲与税、制度は森林経営管理制度が整備されたので、それぞれの市町村にあった目標設定をして主体的に活動を!となっていると思います。

具体的な取り組みは、 市町村にとっての森林のもつ意味合いも相違することから、方法は異なってきます。

例えば、林業経営に適した森林(森林資源があり集約した際の面積も大きくて費用対効果のある施策に期待できる等)が多い市町村もありますし、そういった森林が少ない市町村もあります。市町村は森林経営管理制度に取組んでいますが、前者は”経営”の視点が重要となり、後者は”災害対策””水源保全””生態系保全”が中心になります。

ただ、どちらにしても。。。現場である林政担当者は、森林経営管理制度は初めてのことばかりで試行錯誤で取り組み、実践すれば思いもしない課題に直面しているそうです。まずは事業ボリュームの把握や事業を行う地域の選定、地域への説明や合意形成等々、森林所有者さんが行ってきた森林整備を、地方自治体が実質的管理していくことは難しく、そして重責です。

皆様の知見とともに、市町村が行う森林経営管理制度における施策の支援をしたいと思っています。

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