この本にも影響受けてます!
先日、コンビニにて、重永瞬さんの著書「統計から読み解く 色分け日本地図」を見つけました。この本に影響受けつつ、今の自分が気になる林業を統計から読み解いて見ようと思います。
日本は約7割が森林と言われたりします。でも森林を資源とした林業が盛んかと問われると「???」となるのではないでしょうか?今回は統計から森林、市町村状況から林業を読み解いてみようと思います!
ちなみに、この本には林業関連として「木材ときのこ」の紹介がありますね。
その前に、これまでに勉強したこと
当方、十数年前に愛知県の中山間地域の町で自治体職員をしておりました。直接的な”林政”担当でなかったですが、間接的に”財政”担当として毎年度ごと林政に対する予算や決算を見ていました。その経験では「林政には特段の事業はほぼないから、観光メインで間伐材利用のイベント、獣害対策の電撃策補助、国や県の助成は林道開設や間伐委託などなど。林政は例年並み」という感じでした。町の主要な施策に林業は無いわけです。
ただ、行政職ではなくなった現在において、当社が獣害対策に関わったり、森をきっかけに上下流の地域づくり、山林所有者を支援している特定非営利活動法人の穂の国森林探偵事務所の人たちと関わったりします。そして、”森林”について考えることが多くなりました。
さらに林業を意識するようになったのは【森林環境税及び森林環境譲与税】【地方自治体の森林経営管理制度】というところ。具体的には、森林経営管理制度が始まり、林業の成長産業化と森林の適切な管理の両立を図ることが叫ばれています。しかし、その制度を運用するうえで課題もあり、森林境界を定めることが大変!ということも勉強させていただきました。現在の林業には、これまで真剣に取り組めてこなかった”つけ”、課題があるのです!
まだまだ勉強は足りませんし、現場も十分には分ってないので、偉そうに言うことはできないのですが、森林経営管理制度が適切に運用されて、”あるべき森林の姿”を支援する仕事がしたい!と思ってます。
森林を知って、森林活用して、森林を育成する 森林を活用する条件は?それでは ”統計から読み解く 色分け日本地図” マップクエスト版です
統計調査には国勢調査等さまざまなののがたくさんあります。その中でも林業を読み解くなら「農林業センサス」。この統計は農林水産省が実施する統計調査で市町村を単位に5年ごとに行われる調査となっています。
”統計から読み解く”には「農林業センサス」を利用します。
※当方記憶では総務省や経産省の統計調査とは、調査の進め方や書類がなんとなく違っていた気がしてます。
農林業センサスは、我が国の農林業の生産構造や就業構造、農山村地域における土地資源など農林業・農山村の基本構造の実態とその変化を明らかにし、 農林業施策の企画・立案・推進のための基礎資料となる統計を作成し、提供することを目的に、5年ごとに行う調査です。
https://www.maff.go.jp/j/tokei/census/afc/about/setumei.html
農林業センサスのの結果は、”わがマチ・わがムラ -市町村の姿-”を利用すると便利だったので、そこからデータを取得します。市町村別に、農業/林業/漁業といった観点で、それぞれの調査したデータが取得できます。市町村別の集計結果のほか、一度に県毎に複数の市町村のデータを”一気”に取得もできます。必要なものをチェックすれば、表形式でデータがホームページ上に表示されますし、CSVとしてもダウンロードもできます。
取得したデータ
今回は地域の特徴を評価したいので県単位ではなく市区町村単位に行うこととします。
なお、今回も取得したデータはCSVで、GISで表示するうえでは、縦に並んだデータを横に組み直す等の加工も必要でした。そのためデータを整理・加工するうえで、それなりに時間が必要となったので、当社のある愛知県を中心に東海3県と言われる岐阜県・三重県までを取得しました。農林漁業に関する様々な統計値がありましたが、ここでは漁業データは取得せず、農業と林業のデータから以下を抜粋して取得しました。
※農業データに市町村の概況を知るうえで有効な人口や財政の項目があるので、基礎データとして便利です。
総土地面積
林野面積
耕地面積
総人口
年少人口(15歳未満)
生産年齢人口(15歳から64歳)
老年人口(65歳以上)
総世帯数
市町村財政:歳出総額
市町村財政:歳出総額・うち農・畜産業費
市町村財政:歳出総額・うち林業費
市町村財政:歳出総額・うち水産業費
総農家数
林野面積計
国有林計
民有林計
現況森林面積
森林計画による森林面積計
国有
民有
林家数
基本的な地図(人口密度と高齢化率)
※以下の地図では市町村別の統計値をその値が多いほど濃い青色にしました。
まずはサクッと人口密度の地図です。
図1では誰もが予想する通りです、名古屋中心に人口密度が高いです。やはり都市と過疎の状況は明白ですね。一方図2は高齢化率の地図です。人口密度と高齢化率には負の相関(相関係数は-0.64)がありそうです。
森林を知る地図(林野率)
つぎに、総土地面積に占める林野面積を林野率として地図にします。図2の高齢化率と相関があると一目瞭然です(高齢化率と林野率の相関係数は0.76)。冒頭で日本は7割が森林と書きましたが、森林が多いところは高齢化が進んでいると思います。これまで地場産業としての林業が衰退したので、働く場所を求めて若い人が都市部へ流出したことが予想できそうです。ちなみに図4は生産人口率です(生産人口率と林野率の相関係数は-0.75)が、地場産業としての林業が地域の人口構造と関連を持っていると言えると思います。
林業家は多いの?林業への市町村の思い入れはあるのか?の地図
最後は総世帯数に占める林業家を林業家率として、市町村の総支出額に占める林業費を林業支出率として地図にします。当然林野率が多ければ林業家は多いはずなので相関(相関係数0.68)はありますね。また、林業支出率もそれなりに相関(相関係数0.57)はありそうです。当たり前のことですが、森林が多ければ林業に関わる世帯は多くて、市町村も林業への歳出の割合も多くなります。
ただ、ここで残念なのは”わがマチ・わがムラ -市町村の姿-”では、「林業産出額」「製材工場数」「製材品出荷量」はあるのですが、どうも都道府県単位にしか得られないようです。林業資源や人口構造を土台に、林業が産業としてどのように機能しているかを見た方のですが、ここで打ち切ります。
どのみち推察は数字ばかりではいけないので終わりにしますが、ちょっと悔いが残ります。もし、林業を産業として見た統計値があれば、だれか教えてください!
まとめ
”統計から読み解く林業”としてやってみたものの、”統計から読み解く森林”までしかできなかったのは残念でした。
また、時間の都合で東海3県に限定して読み解こうとしたのですが、本来林業の盛んな都道府県も比較できれば良かったですね。
林野庁では「森林の有する公益的機能は、地球温暖化防止のみならず、国土の保全や水源の涵養等、国民に広く恩恵を与えるものであり、適切な森林の整備等を進めていくことは、我が国の国土や国民の生命を守ることにつながる」とされ、また「山村地域のこれまで手入れが十分に行われてこなかった森林の整備が進展するとともに、都市部の市区等が山村地域で生産された木材を利用することや、山村地域との交流を通じた森林整備に取り組むことで、都市住民の森林・林業に対する理解の醸成や、山村の振興等につながることが期待されます」となっていて、産業としての期待もあります。また、森林環境譲与税の使途は、現在では間伐等の森林整備等にも取り組み始めている自治体が増えてきております。
ただ、令和2年度では、間伐等の森林整備関係に取り組む1232市町村のうち、意向調査やその準備の状態である市町村は921市町村と、森林経営管理制度に困っている自治体も多いことが垣間見れます。
これまでの当方の東三河地域の状況把握では、実際に間伐を行う前に森林境界が決まっておらず適当すぎて境界決めの資料作やその作業が大変だったり、それを実際に受託する事業者が少なかったり、境界調査業務の時間がかかりすぎています。不在山主さんや高齢者の山主さんの立ち合いに時間がかかっています。
当方の自治体財政で”林政施策は例年並み”これまでどおり”とやってきた”つけ”とも思えて申し訳ないところでもあります。市町村にとっては新たな取り組む「森林環境譲与税」。林業の産業化によって過疎化を食い止めることや林業による地域活性化にもつなげられそうで、これまでの”つけ”を返すべく”あるべき森林の姿”を支援する仕事がしたいと思ってます。